アポロとソユーズ








立花隆の「宇宙からの帰還」を読んだのはだいぶ前(1985年)になる。月旅行を果たした人々のインタビュー記録であるが、月面に降り立ったときの想い、宇宙から眺める地球の姿を見て帰還後、キリスト教の伝道者になった飛行士の物語など興味深く読んだことを思い出す。
そして最近、「アポロとソユーズ」(2005年5月発行)という本を読み終えた。アメリカの宇宙飛行士であるデイビット・スコットとソ連のアレクセイ・レオーノフの自伝である。米ソ二大国の二人の話を交互に織り込んだ物語である。そこにはマスコミに現れなかった本音が語られている。レオーノフははじめて宇宙遊泳をしたことで知られている。またスコットはアポロ15号で月面に降り立ち、地質学的なサンプルを持ち帰っている。宇宙開発競争の真っ只中に立たされた二人の思いと友情が読み進めるうちにひしひしと伝わってくる。
立花隆の本をあらためて読み返してみると、そこに繰り広げられている人間ドラマに改めて考えさせられることが多い。帰還後、精神障害に陥った飛行士もいたのだ。ルナティックという言葉の狂気的という意味合いがそのまま当てはまる物語でもある。
現在、アメリカはアポロ以降、再び月に人を送ろうと計画している。これは何を意味するのかは定かではないが、国家という威信をかけたひとつのアピールとして意図しているのであれば、それはアポロとソユーズという戦いですでに終了していると思う。次期の相手としてどこを意識しているかが気懸かりではある。
2005/10/6 記