望遠鏡で本格観測




                                         by Akira. S


 双眼鏡は、倍率がせいぜい20倍止まりですから、大きさ(視直径)が小さな天体には物足りません。それには、どうしても望遠鏡が必要になります。望遠鏡には、いろいろな種類があるため、目的に合わせて適切なものを選ぶ必要があるでしょう。

望遠鏡の種類
 17世紀初めに、オランダのリッペルシェイによって発明された屈折望遠鏡は、たった2枚のレンズからできていました。前側の大きい凸レンズと、後ろ側の小さい凹レンズです。ガリレイが作ったのもこの形式です。そのためガリレイ式と呼ばれています。この望遠鏡の良い点は、上下左右がそのまま見えることですが、視野が極端に狭いという欠点があり、いまでは倍率の低いオペラグラスとして使われるくらいのものです。
その後ケプラー式と呼ばれる後ろのレンズも凸レンズを用いた望遠鏡が現われました。像は上下左右が逆さになってしまう欠点はありますが、視野がガリレイ式よりも広いため、屈折望遠鏡はほとんどこの形式です。初めの頃の屈折望遠鏡は単レンズの組み合わせだったため、色のにじみ(色収差といいます)が出て、解像度を悪くしていました。それを防ぐために焦点距離を非常に長くして、全長が数十メートルにもなる望遠鏡も作られましたが、操作に手がかかり、思うような観測ができませんでした。
そのようなときに、万有引力の法則で有名なニュートンが新しい望遠鏡を考え出しました。反射望遠鏡です。筒の後ろに凹面鏡を置いて集光し、それを平面鏡で直角に反射させ、筒外からのぞくようにした望遠鏡です。ニュートン式と呼ばれるこの形式は、いまでも最もポピュラーな反射望遠鏡として親しまれています。反射式の良い点は色のにじみが出ないことです。
ただ温度変化による鏡筒内の対流が起こりやすく、像が乱れやすい欠点を持っています。その後、屈折望遠鏡も対物レンズを2枚合わせにしたアクロマートレンズで色収差を小さくすることに成功しました。さらに最近では、短い鏡筒が主流を占めるようになり、アクロマートよりさらに色収差の少ない、蛍石EDガラスといった特殊な光学ガラスを使ったアポクロマートが出回っています。

また、反射と屈折の中間のような構造をしたシュミットカセグレン形式の望遠鏡も多く見かけるようになってきました。(左図)




天体望遠鏡の性能
  
(1)どうして大きくみえるの?
 望遠鏡のしくみは簡単。まず、大きな凸レンズ(凹面鏡の時もある。対物レンズとか対物鏡という)で光を集めて像を作る。それを、接眼レンズという上等の虫メガネで大きくしてみるのが望遠鏡だ。太陽からの光を凸レンズで受けると、光が集まる点があるのがわかる。これを「焦点」と呼んでいる。レンズから焦点までの長さを「焦点距離」と言って、望遠鏡の倍率に関係している。
  望遠鏡の倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離
だから、対物レンズの焦点距離が長いほど、あるいは接眼レンズの焦点距離が短いほど大きく見えることになる。

(2)目で見えない星が見えるのはどうして?
 人間の目が、レンズの働きを持っていることは知っているでしょう。目にはひとみがあるが、これがレンズの絞りの働きをして明るさを調整している。昼間は2mmくらいの直径、夜になると7mmくらいに大きくなる。
だから、人が星を見るとき、直径7mmの小さなレンズで見ているのと同じになる。窓が大きいほど、部屋の中は明るくなるのと同じように対物レンズの直径が大きな望遠鏡ほどたくさん光を集めてくれる。それで、目だけでは見えない星も望遠鏡を使うと見えるようになる。でも、恒星は、非常に遠方にあるので、望遠鏡で倍率をかけても点であり、大きくはならない。
(3)曇りでも、星が見えるの?
 望遠鏡がいくら光を集める能力が高いと言っても、空が曇っていては見ることはできない。星を見るのはよく晴れた日を選ぶようにしよう。ただ、風が強い日は、像もゆらゆらゆれたり、望遠鏡をうっかり倒してしまうこともあるので避けたほうがいいだろう。

(4)ファインダーを上手に使おう!
 望遠鏡は倍率が高いため、星の導入には苦労する。しかし大抵の望遠鏡の上には小さな望遠鏡(ファインダー)が付いている。ファインダーは倍率が低くて目的の星を入れるときに大活躍する。ファインダーと望遠鏡は平行に調整されているため、ファインダー内の十字線交点付近に星を入れてやると、望遠鏡にも同じ星が入っているはずだ。


(5)倍率は適度がいい
 「高い倍率ほど良く見える」と思っている人が多いと思う。しかし望遠鏡の性能は、対物レンズの直径で決まってしまうため、倍率にも限界がある。望遠鏡の性能は普通、次の項目で表示されている。

 口径・・・・対物レンズまたは対物鏡の直径
 分解能・・・どの位、細かい所まで見分けられるか。角度の秒で表す。
 集光力・・・人間の目に比べてどの位、光を集められるか。
 極限等級・・何等星まで見ることができるか。

 望遠鏡で出せる倍率の上限は、だいたい対物レンズの直径(mmで表す)の2.5倍くらいまで。例えば100mmであれば、250倍くらいが限度。ただし空気のゆれが激しいときは倍率を控えめにした方が見え味がいい。


経緯台と赤道儀

 望遠鏡での天体観測では、高い倍率を使うことが多く、手持ちでの観測はできません。どうしても鏡筒を載せる台が必要になりますが、大きく分けて二つの形式があります。経緯台と赤道儀と呼ばれています。
経緯台は初心者にも簡単に扱える台です。上下左右に動かして目的の天体を導入します。視野に入れた星を追いかけるためには、小さな動きのできる微動ハンドルがついている方が便利です。簡単に扱えるのは良いのですが、長時間の観測や露出時間の長い撮影には向いていません。あくまでも手軽に星空を散策する方に向いています。ドブソニアン形式と言われているものも経緯台の一種です。

それに対して赤道儀は長時間の観測に向いています。地球の日周運動と同じ方向に回る軸(極軸)と、それと直角方向に回る軸(赤緯軸)を持っている台です。ですから、星を追いかける場合、極軸回りの回転だけですんでしまいます。極軸にモーターを付けてしまえば、自動的に星を追いかけてくれます。長時間露出の写真撮影もできますし、スケッチのときに視野内にいつも天体が見えているため、観測に集中することもできるわけです。私が、天体観測を始めた頃は赤道儀を正しく極軸に合わせるのに苦労しましたが、いまでは赤道儀の極軸のなかに小望遠鏡(極軸望遠鏡)を組み込んであるものが多く、経緯台と同じような手軽さで扱えるようになってきました。