シュワスマン・ワハマン第3周期彗星



彗星は21日にはかんむり座のα星のそばに輝いていたが、今はこの星座を通り過ぎようとしている。移動速度が速くなっているのは彗星がしだいに地球に近づいている証拠だ。
73P/ Schwassmann-Wachmann3(B&C)
【 B核&C核 】
2006/4/25 22:16〜22:20(JST) ダーク補正後、2枚合成
Nikon f=105mm(F2.5)、EOS20Da、LPS-P2Filter
ISO1600、ISO800
自宅にて
73P/ Schwassmann-Wachmann3(B&C)
【 C核 】
2006/4/25 21:57〜22:01(JST)ダーク補正後、2枚合成
【 B核 】
2006/4/25 22:08〜22:12(JST)ダーク補正後、2枚合成

Vixen R200SS直焦、コマコレクター
EOS20Da、LPS-P2Filter、ISO1600
自宅にて

国立天文台からシュワスマン・ワハマン彗星について分かりやすい解説を送ってきたので、ここに紹介しよう。

国立天文台 アストロ・トピックス (207)

     地球に接近するシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星


 5月12日に、シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(注)が地球に最接近します。

 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)は、1930
年に、ドイツのシュヴァスマンさんとヴァハマンさんによって発見された小さ
めの彗星です。
 5.4年の周期で太陽を一回りする短周期彗星で、ゆがんだ軌道のため、遠い
ときは木星の軌道付近まで離れますが、近いときは地球軌道の少し内側にまで
やってきます。そのため、タイミングによっては、彗星が太陽に近づく頃に、
地球にも大接近します。1930年の発見時にも、地球に0.06天文単位にまで近づ
いていました。ただし、タイミングが合わないと、小さい彗星ですので、なか
なか見えません。そのため、1979年に再発見されるまで、なんと半世紀にわたっ
て、行方不明となっていた謎の彗星なのです。

 他にも謎があります。1995年に太陽に近づいたときには急激に明るさが上昇
し、その後、彗星の核が3つに分裂しているのが観測されたのです。汚れた雪玉
とも言われる彗星は、太陽の熱で融け蒸発していく間に、核が分裂してしまう
ことがよくあります。なかには、2000年のリニア彗星のように、ばらばらにく
だけた破片がすべて蒸発してなくなってしまうものもあります。
 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の場合、2000年に太陽に近づいたとき
には、3つに分裂した核のうち2つが戻ってきたのが確認され、新しい破片も発
見されました。そして、今年の3月には、新たに4つの核が発見されました。さ
らに、4月に入ってからは、破片の数は数十個にもなっていることが確認され
ました。どんどん分裂を繰り返しているようで、もしかすると、今回も皆さん
が眺めている最中に、また分裂していくかもしれません。分裂が起きると、急
に明るくなることもありますので、注目したいところです。

 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星は、5月12日、地球に0.08天文単位にま
で近づきます。予想通りに明るくなっていけば、5等から4等級くらいになり、
空が暗いところならば肉眼でも見えるかもしれない、と期待されています。し
かし、13日が満月のため、ちょうどこの頃は月明かりがあり、彗星のようなぼ
うっとした天体は見えにくくなります。できれば、ゴールデンウィーク頃の、
月明かりのないときに眺めてみるとよいでしょう。

 そこで国立天文台では、ゴールデンウィークにあわせて、「謎の彗星見える
かな?」キャンペーンをおこなうことにしました。2006年5月2日の夜から5月8
日の朝までの6晩に、肉眼や双眼鏡などでシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星
を観察し、このキャンペーンページから報告していただく、というものです。
 これまでのキャンペーンと同じように、日本のどこで彗星が見えたかが、集
計結果からわかるしくみです。携帯電話からでも参加できますので、今まで彗
星を見たことがないという方もぜひチャレンジしてみてください。

参照:国立天文台「謎の彗星見えるかな」キャンペーンページ
    パソコン用 http://www.nao.ac.jp/phenomena/20060502/index.html
    携帯電話用 http://www.nao.ac.jp/i/phenomena/20060502/index.html


(注)この彗星の正式名称は 73P/Schwassmann-Wachmannです。発見者がドイツ
人であることから、ここでは「シュヴァスマン・ヴァハマン」と表記していま
す。英語圏では、「シュワスマン・ワハマン」と発音されることも多く、その
ような表記も長い間使われてきています。

      2006年4月25日            国立天文台・広報室