復刻版「大宇宙の旅」
●古めかしい装丁の本だ。1950年出版というからぼくが2歳の時に子供向けに出された宇宙探検物語である。その本が今年の7月7日に再販された。著者の荒木俊馬(あらき・としま)さんは、天文学者で京都産業大学を創設した人物。ぼくにとって著書のひとつである「現代天文学辞典」は端から端まで読んで天文の知識を得た貴重な本だった。「大宇宙の旅」は当時知らなかったが最近、復刻版が出たという新聞記事を読んで取り寄せることにした。それによると銀河鉄道999の著者である松本零士さんが小学校6年生のときに出会って感銘を受けた本と書かれていた。「もし・・・もし・・・このとき、この本に巡り会えなかったら、確実に自分の歩む道も生涯を支えてくれる運命も、違ったものになっていただろう」とこの本が原点であると話している。999の主人公である星野鉄郎はメーテルと一緒に銀河を旅する物語であるが、確かに荒木さんの主人公である星野宙一とは名前とイメージが重なるところがある。「大宇宙の旅」は物語という形式をとっているが、天文学を小学生から中学生が読んでも分かるように書かれた本である。そのため、やさしく書かれているが天文学の内容は正確である。 ただし半世紀も前の本なので、その後の天文学の進歩で書き換えられた部分もある。宇宙の広さや星の進化そしてその後に発見されたクエーサーやブラックホール、ダークマター、太陽系外惑星などはもちろん触れられていないが、そこは天文学者の福江純さんが追加執筆して補っている。こどものために書かれているとは言え、大人が読んでも楽しめる本に仕上がっている。中に計算をするところも出てくるが小学生でもわかる説明がされているので大人でも勉強になる。そういう計算で星の重さを推定するのかとか、銀河系の星の数を推定する計算もわかりやすく説明されていたりする。イラストはすべて荒木さん本人の作という。「自然科学者にとって芸術は大変に大切なものだ」と荒木さんは話している。この本は物理の内容を分かりやすく解説したガモフの本と似ているところがあると思う。 ----------------------------------------------------- 「大宇宙の旅」(恒星社厚生閣、B6版、400ページ、2940円) 荒木俊馬(1897−1978) 恒星社厚生閣の紹介ページ |
★そういえば松本零士さんがプロデュースした水上バスが浅草ーお台場間を運航しているんですね。未来型水上バス「ヒミコ」と名づけなれている。船内では銀河鉄道999のイメージも盛り込んで「星野鉄郎、メーテル、車掌さんと一緒に旅しているような体験ができる」ということなので、一度乗ってみたい船ですね。 水上バス「ヒミコ」のページ |
記:2006/8/6 |