ダリ回顧展



上野の森美術館で開催中の「ダリ回顧展」を見てきた。入り口に飾られた大きな看板がまず眼を引く。ピンと張ったカイゼル髭の面構えがダリ(1904年−1989年)の異様さを印象付ける。
中の展示は年代順に並べられていて初期の作品にはシュールレアリズムの画風はまだない。少年時代に書かれた絵を見ても、すでに絵の才能が現れているのが分かる。ダリへの印象を改めたのは、彼がアインシュタインの相対論や量子論の勃興期にその強いインパクトを受けて、彼の画風に影響を与えているということだ。時間や空間の歪み、そして量子論の不確定性やミクロの振る舞いが現実の世界の不確定や歪みにまで及ぼしていることを感じ取って、グニャッと曲がった時計など一見異様とも思える表現に反映している。また生物学のDNAや二重螺旋などの影響も見られる。彼の奇異とも見られる作品の背後にあるこれらのことを考えると決して奇異でもなく自然とあの表現になるということが理解できるのである。今回の展示会でダリの多くの作品を見ることができる。こんな機会は滅多にないので、もう一度見に行きたいと思っている。

ダリ回顧展公式ホームページ
記:2006/9/30