源氏物語



日本が世界に誇る長編恋愛小説「源氏物語」は平安時代に紫式部によって書かれた。「桐壺(きりつぼ)」から始まり「夢浮橋(ゆめのうきはし)」まで実に五十四帖にも及ぶ。複数の人が書いたという説もあるが、紫式部ひとりの作品であるというのが一般的に受け入れられている。
 五十四帖のうち「桐壺」から「藤裏葉(ふじのうらば)」までの三十三帖までが第一部と見られていて光源氏の両親の恋から始まり、光源氏の39歳までの絶頂期を描いている。全編を通すと登場人物は実に430人というからトルストイやドストエフスキーをはるかに超えている。源氏物語は光源氏の死後、その孫の世代の恋愛事件まで書かれていて、四代に渡る長編小説である。
 と、分かったように書いてきたが、実はまだ読み始めたばかりである。寂聴版源氏物語が出て久しいが、今度、文庫本化され発売され始めたのを機会に読んでみる気持ちになったのだ。以前に寂聴さんの源氏物語のエッセンスを書いたものは読んでいたし、河合隼雄さんの源氏物語を心理療法家として読み解いた本も読んではいて、いつかは読んでみたいと思っていた。しかし相手は長編であり、いざ読むとなると一大決心がいる。そんなときに文庫本という手軽に読める形で出版されたので早速、飛びついて読み始めたしだいだ。
 現代語訳であるため、読みやすい。これなら読みこなせそうだ。源氏物語は歌のやり取りが重要な役目を果たしている。あらゆるところで歌を送り、その返歌が返ってくるという構成が見られる。そのやり取りはおだやかな世の中を見るようであり、現代とは違った風流を感じることができる。男と女の心理描写も繊細で、よくここまで心の中を見て書いているかと感心してしまう。
先はまだまだ長いが次の巻が出るのを楽しみにしている。
記:2007/1/27