ヤマブキ


越生(おごせ)の龍穏寺(りゅうおんじ)へ向かう道は左手が渓流である。曲がりくねった道を登っていくと、山の花が姿を現してくる。良く目に付くのはしゃがとこのやまぶきである。

「山吹」という字が当てられているが、これは山振(やまふき)という意味だそうで、枝が弱々しく風のまにまに吹かれてゆれやすいところからきている。確かに少しの風でもゆれているためシャッターを切るのが一苦労だった。

太田道灌が、鷹狩か何かでにわか雨に会った時のことである。一軒の民家に蓑を借りようと立ち寄ったところ、この家の娘が、貧し過ぎて借す蓑がないことから、中務兼明親王の古歌

七重八重花は咲けども山吹の
  実のひとつだになきぞ悲しき


と山吹の一枝を差し出したが、道灌はこの歌の意味が分からず、大いに恥じ、以後、文武両道に励んで立派な武士になったという逸話が残っている。
この歌に出てくる山吹は、ヤエヤマブキである。民家があったとされる場所に、今は「山吹の里」の碑が立っている。また、道灌の墓は龍穏寺にある。
ヤエヤマブキ  2001/4/15
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