星 新一


 
ぼくらの年代では、学生時代に良く読んだSF作家だと思いますが、今の人の中には星新一(1926年9月6日 - 1997年12月30日)の名前を知らない人も多くいるでしょうね。ぼくは学生時分、文庫本を買ってきてはだいぶ読んではいましたが、ここで出版された「ほしのはじまり」を読んでみると、前に読んだはずの話なのに筋はすっかり忘れているのも多い。今回は新井素子さんが選んだ54編のショートショートをじっくりと読み返すことができました。ショートショート即ち短編より短い小説であり、星さんは生涯に1001編の話を書いたとされています。実際にはこれを超えているという話もありますが、きりのいい数字でまとめているのがまたいい。ちょうど千一夜物語にあやかったというような感じです。
「ボッコちゃん」、「おーい でてこーい」などは何となく覚えていましたが、時代物も書いていたとは知りませんでした。最後に収録されている「殿さまの日」はショートショートではなく短編といってもいいくらいの長さのものでした。
ここの収録されていない作品はもちろんたくさんあります。話は1001話あるわけですからまだまだ読むべきものは残っています。こちらはまたゆっくりと読んでゆこうと思っています。
 今年、星 新一の評伝として注目を集めたのが、最相葉月さんの「星 新一 1001話をつくった人」でした。星さんの生涯を、詳細に調べたもので、星さんの話には見られない別の星 新一像を描き出しています。
 それにしても、星さんの作品は古いのに、古さを感じさせない内容を持っています。それというのも星さんが、時代を感じさせる風俗や政治、流行ごとなどを意識的に避けて文にしなかったことによります。改訂や本の組みなおしなどがあるときには文章を見直して、ことばを変更したりして、改稿していった成果もあるようです。それだけ、後々まで残る作品というのを意識したと言えるでしょう。
 記:2007/12/24