宇宙と生命の起源



われわれはどこから来てどこへゆくのかという疑問は昔から問い続けてきたことだ。誰も明快な答えは持っていないし、納得のいく様な理論もない。あまりにも根源的であり、現在のいろいろな証拠から推論に推論を重ねていくしかないからだ。しかし、ひとつの光が見えてきたのは宇宙の観測からだったと言える。ハッブルの法則の発見がその端緒となる。
「銀河の動きを観測したとき、すべての銀河が遠ざかっており、遠い銀河ほど後退速度が大きい」という単純な観測事実にまとめられている。これが何を意味するかは、我々の地球が宇宙の中心と考えるよりも宇宙それ自体が膨張しているとした方が理にかなっている。昔の天動説の誤謬に陥らないひとつの思いと言えるだろう。
宇宙が膨張しているとすれば、逆に辿れば一点から始った宇宙の起源(ビッグバン)が考えられるのは当然の成り行きだ。それではその前はどうだったのかと問う人は必ずいる。しかし、現代の科学はそこに科学的な理論を付け足すことはできない。その時点ですべての理論が破綻してしまうからだ。そこには常に無限ということがつきまとう。それを回避するためには、極小の世界を扱う量子論と、広い世界と重力を扱う相対論が合体する必要がある。ここが最後の難関となっている。世界の科学者はそこで四苦八苦している。
科学は観測と理論と両輪が噛み合わないと進んでいかない。「どんな観測が成され、それを説明する理論はどうなっているのか」、そんな世界をやさしい言葉で解説した本がある。「宇宙と生命の起源」(岩波ジュニア新書。嶺重慎、小久保英一郎編著)。現在その分野の第一線で活躍している方々の11章にわたって最近の成果をそれぞれ語っている。これらの話をつなぎ合わせると、おぼろげではあるが、その方向性が見えてくる。
われわれはいったいどこからきたのか。宇宙はどのようにして始まり今日のようになったのか。宇宙、銀河、恒星、惑星、生命の誕生の謎に迫り、ビッグバンから人類へいたる、美しく壮大な137億年の宇宙と生命の起源の物語である。

第1章 宇宙の始まり
第2章 元素はどこから来たのか
第3章 宇宙をおおう大規模構造
第4章 さまざまなタイプの銀河の誕生
第5章 星が生まれる現場
第6章 ブラックホールのつくり方
第7章 太陽系の誕生
第8章 水惑星・地球へ
第9章 生命の起源
第10章 人類までの道のり
第11章 生命・物理現象と多様性

記:2006/12/12