生命の歴史


地球が太陽系の中で生まれたのが46億年前、そしてその地球上に生命が誕生したのは40億年前と言われている。宇宙の塵が集まって惑星を作ったということは、生命の素は宇宙にあるとも言える。小さき生命から始まり、ホモ・サピエンスに至る壮大な生命史というものには常に心惹かれていた。そのたぐいの本は山とあるが、たいがいある特定の生物、例えば三葉虫、アンモナイト、始祖鳥や恐竜といったものに限定されているものが多い。生命史のある一段面を描いている書物はそれでおもしろいのだが、前後のつながりが曖昧模糊としていて、読み終わった後に何か割り切れないものが残っていた。そんな折、ひとつの本が眼に止まった。

生命40億年全史」(LIFE : An Unauthorized Biography)、大英自然博物館古無脊椎部門主席研究員のリチャード・フォーティ氏による壮大な生命史。
自己の体験や学者の黒い内側なども交えながらの楽しい読み物に仕上がっていた。それよりも生命史をまとめ上げた力量に驚きを覚える。これを書き上げるためには、植物、動物、天文など幅広い知識を必要としているからだ。
ディズニーの「ファンタジア」やスピルバーグの「ジュラシックパーク」、人類のイブ仮説の話まで登場する。
ホモ・サピエンスが生命史に登場するのは、たかだか10万年ほど前。それ以前の生命に比べればまだまだ新参者。その新参者の誕生によって滅んでいった生物たちも数多くある。適者生存という原理だけでは説き明かせない秘密が生命の中には潜んでいる。化石として残るためにはそれなりの条件が必要なため、生命史に登場しない生物も多く生まれ死滅していったことは明らかだ。今定説になっていることも、新たな化石が発見されることによって生命史は常に書き換えられていている。恐竜のシッポは重そうに垂れているのではくて、ピンと横に張っていて前後のバランスをとっていたとか。そんなことを考えながら、少年少女のようにわくわくしながら一気に読み終えていた。久しぶりに読後感がいい本である。欲を言えばもう少し写真や図を多く入れてくれれば、さらに読みやすくなったのではないかと思う。逆に言えば推理小説を読む感覚で頭を働かせながら読ませる意図もあったのかしれない。

アンモナイト

放散虫(直径1mm)

【 地質年代表 】
単位
100万年前
地質年代 主な区分 特徴
(0.01) 第四紀 完新生  
1.64 更新生 氷河時代-特に北半球、それも特殊な適応をした哺乳類への大きな影響
5.2 第三紀 鮮新生 人類の仲間
23.3 中新生  
35.4 漸新生 分離した大陸での進化と断続的な移住
56.5 始新生 哺乳類と鳥類の多様化
65 暁新生 大量絶滅、恐竜の終焉
145.6 中生代 白亜紀
208 ジュラ紀 広域でチョーク層の堆積(ジュラ紀〜白亜紀)
海にはアンモナイト、陸上には恐竜
245 三畳紀 現代につながる海の拡大(三畳紀〜ジュラ紀)
290 古生代後期 ペルム紀 大量絶滅
パンゲア超大陸
362.5 石炭紀 石炭の期限となる森と湖
408.5 デボン紀 魚類と両生類
438.1 古生代前期 シルル紀 カレドニア山脈の発達、生物の上陸
505 オルドビス紀 カピタス海の発達
545 カンブリア紀 三葉虫ほか海生動物の登場
2500 先カンブリア時代 原生代 多細胞生物
3500 始生代 生命-岩石中の明確な痕跡
   

「生命40億年全史」(草思社発行 リチャード・フォーティ著 )
2003/07/12