魔鏡のひみつ
●魔鏡をご存知だろうか?よく神社などに凸面鏡を飾っ てあるのを見たことがあるだろう。 普通は、ただの鏡なのだが、それに光をあてて壁に うつしてみると、模様や絵が見えることがある。 表面にはデコボコは無い。 ところが確かに絵が映し出されている。 そんな不思議さから「魔鏡」と呼ばれているのだ。 どうしてこんな現象が現れるのか、あまり知られてい なかったが、先日ある新聞に魔鏡を実際に今でも作 っている山本真治さんの話が載っていた。 魔鏡をデザインから鋳型、研磨まですると3ヶ月はかか るという。 興味深かったのは、その作り方と、そのひみつである。 ●銅製の鏡の背面にまず模様を作ることから始まる。 (左図の(1)) 次に表側をきれいに研磨して凸面鏡として仕上げる。 (左図の(2)) そうすると、きれいに研磨したつもりでも、裏との厚み の差で、研磨の差ができてくる。厚い部分はたわみ が少ないため良くけずられるが、薄い部分は裏側に 逃げてしまいあまり削られない。そのため厚い部分は 本来の凸面から削られて、いくらか凹面になるが、薄 い部分は凸面のままである。(左図の(3)) そのため鏡に当った光は凸面では散乱して像は結ば ないが、凹面からの反射光は集光して像を結ぶ。 こうして背面にほどこした像が何も無いような鏡の微妙 な凹凸によって不思議な像を作りだすのだ。 |
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●山本さんは、和鏡作りで文化庁の無形文化財に指定されている方である。3mmくらいの青銅鏡を1mmくらいまで削 らないと魔鏡ができないという。またあまり削り過ぎても割れが鏡に入ってしまい使い物にならない。ここが腕の見せ所 なのだろう。山本さんの場合は、軽く面をたたいたときのポンポンという音の微妙な違いでその判断をしているという。 魔鏡は中国では「透光鑑」(とうこうかん)と呼ばれ、2000年前の漢の時代からあると言われている。日本では江戸時代 にさかんに作られていたが、その技術が山本さんに受け継がれ、今でも博物館や神社から注文を受けているという。 |