丸刈りデビュー



梅雨に入る直前だったか、35度を越えるときがあった。この異常な暑さの中、町を歩いているとすぐ汗が流れ落ちてくる。暑い。そこで思い切って頭を丸刈りにしてもらうことにした。散髪屋に行くと、「最近、丸刈りデビューする人が増えているんですよ。私もできることならやりたいですね」と刈ってくれた女性は言っていた。おでこから後ろに向かってバリカンで一気にカットしていったときには、一瞬後悔の念が起こったが・・・。カットの具合も0.5mm、2mm、3mm、6mm、9mm(関東ではこのサイズになっていて関西では2,3,5,7になっているらしい)と自由にできるらしい。0.5mmはどんな感じですかと聞くと、スキンヘッドのようにつるつると青い感じに見えるあれですよと言われて、これはやりすぎかなと思い、無難な6mmでカットしてもらうことにした。歳のせいかここにきて、髪の毛が薄くなってきたことも丸刈りにしようと思った動機のひとつだった。昔ユル・ブリンナーというスキンヘッドの俳優がいましたね。「王様と私」、「十戒」や「荒野の七人」で個性的な役を演じていましたね。女性でも以前、「マルガリータ」と呼んで、丸刈りやスキンヘッドが流行ったこともあった。「G.I.ジェーン」のデミ・ムーアなんかそうかな。同じマルガリータでもテキーラベースのカクテルとはまったく関係ない。最近ではマルガリータ(丸刈りーた)する犬や猫も増えているとか。これって蚤がつかなくていいのかな。
 刈り上がった自分の顔を見て一瞬変な感じだと思ったが慣れてくるに従って、これも悪くないなと思うようになる。へたに髪の少ないところを少ない毛で隠すよりもよほどすっきりとしている。
亡くなった父が、髪が少なくなっているのに七三に分けていたのを思い出す。いかにも年取ったなという感じだった。サッパリと丸刈りにすると、反対に若返ったような感じだ。丸刈りというと高校野球選手などのイメージがあるからかもしれない。
散髪屋から帰ってくると、「どうしたのお父さん」とか、「頭が小さくなったみたい」とか、「かわいい」とか、からかわれた。それでもこんなものは慣れと自己満足以外にはない。慣れてしまえばあたかも昔からこの姿をしていたものと思い込んでしまうものだ。生まれた時はたいがい毛が少ない丸刈り状態じゃなかったかな。赤ん坊というくらいだから。中にははじめからしっかりと髪が生えた赤ん坊もいるにはいるが。
 藍染の作務衣を着た。まるで坊さんと変わらない。お寺にでも行ったらきっと間違えられるに違いない。それでもこの格好が気に入っている。作務衣のさらっとした絹の肌触りは気持ちがいい。
坊主と丸刈りは違うとよく聞くけれど、どこが違うのだろう。

●「坊主」はかつて僧侶が髪型を丸刈りにすることが求められていたことからきているという。
●「丸刈り」は頭髪を非常に短く均等な長さに揃える髪型をいう。

これからすると丸刈りに坊主頭(刈り)も含まれていることになる。最近は坊さんでも坊主頭とは限らない。強制されていないからだ。そういえば昔「坊ちゃん刈り」というのがあったな。後ろと横は刈り上げているが前髪と頭上の髪は普通の髪型だ。子供のころの男の子はほとんどがこの髪型だった。
 丸刈りで一番便利だと思ったのは髪を洗うときだ。洗うのも簡単だが、ドライヤーなんか使わなくてもすぐに乾く。暑い時は頭から水をかけて手ぬぐいで吹くだけで済む。櫛で髪を整えるなんて手間もいらない。寝癖なんてこともない。丸刈り様々だ。ただひとつ丸刈りの弱点は物に当たった時の痛さである。髪の毛がある程度クッションの役目をしていたのが、それがなくなるので気をつけないといけない。ともあれ丸刈りで人生観も変わったような感じだ。カツラよりもこちらの方が断然お勧めですね。やっぱり人間はありのままでなくちゃ。

記:2006/7/25