●澄み切った夜空にちょうどいい高さに見える月を見ながら一杯というのも乙なものだ。例年だと9月に中秋の名月というものがあるが、今年は違う。今年の「中秋の名月」は10月6日で、しかも満月の一日前だ。去年は9月18日が中秋の名月だった。芋名月(いもめいげつ)という別名を持つのはちょうど里芋の収穫する時期と重なっているためで、芋煮などでお月見というのもいいかもしれない。さて、中秋の名月はどうやって決めているのか不思議に思ったことはありませんか。今日はこの話題です。
秋の月はちょうど見やすい高さに見えている。満月の高度は夏に低く冬に高い。春と秋にちょうど中間の見やすい高さになる(下図参照)。春の朧月も悪くはないが、秋の澄み切った空に見る月はやはり格別だ。
一般に中秋の名月は旧暦(太陰太陽暦)の8月15日と決められている。旧暦では秋は7月〜9月であり、その真ん中を中秋と言う。そのため旧暦の8月が中秋になる。さらに「新月の日」を一日(ついたち)として、次の新月を迎えるまでを1か月、そして12か月を1年と決めている。月の満ち欠けと日付は対応しているので、普通は十五日が満月ということになる。月の満ち欠けで一月を決めてしまうと季節のずれを生じてしまう。というのは新月から新月までのサイクルは約29.53日であり、一年に直すと29.53×12=354.36日になる。太陽を基にした一年のサイクルは約365.24日だから、一年当り365.24−354.36=10.89日ずれていくことになる。3年弱で一月分(10.89日×3)の誤差が生じてしまう。そこで、3年に一度、一月分を余分に入れることにしている。これを「うるう月」と呼んでいる。
今年がその年に当っていて、「うるう7月」を入れたために従来より一月遅れる結果となってしまった。
さらに「十五夜」なのに満月ではない。これはどういうことだろう。
「満月の日」と言うのは、その日のうちに「月が地球から見てちょうど太陽の反対方向を通る瞬間」を含む日のことを意味している。「新月の日」も、「月がちょうど太陽と同じ方向を通る瞬間」を含む日と決められている。さて、「新月」から「満月」までは、約14.8日(29.53÷2)。「新月」の瞬間を含む日が「一日(ついたち)」だから、その時刻が例えば午後11時のように遅い時間だと、「満月」の瞬間は「十六日」になってしまうことになる。
今年の中秋の名月(十五夜)はそんなわけで、満月一日前のやや欠けた月となる。ただ明日の天気はこちら(埼玉)では晴れマークがありません。残念ながら今年は見ることができないかもしれませんね。
因みに、日本が明治6年に太陽暦に移行したのは、明治政府が年に13回給料を払うのが面倒だったからという裏話もあるが、本当かどうかは分からない。