月の観測 


 望遠鏡を使って、はじめて観測するのには、月はもっとも手頃な対象でしょう。観測相手が大きくて、
誰にでもすぐに入れることができるためです。月の全面を一度に見たいときには、50倍以下の倍率が
適しています。クレーターその他の対象をもっと拡大してみたいときには、接眼レンズの焦点距離が
短いレンズを使って倍率を上げてください。
望遠鏡の倍率は、「対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離」で求めることができます。例え
ば、対物レンズの焦点距離が1000mmで、接眼レンズの焦点距離が20mmのときは50倍になります。
接眼が10mmであれば、100倍の倍率になります。

観測に適した月齢
 よく満月のときに月を見て、がっかりする人がいます。月全体が影もなく、のっぺらぼうに見えて、クレ
ーターもはっきり見えないためです。これはどうしてでしょうか?
満月のときには、太陽の光が月の真っ正面から照らしていて、月には影ができません。そのため、クレ
ーターも立体感のある姿には見えないのです。もしクレーターを良く見たいときは欠けているときをねら
ってみてください。クレーターの斜めから光が当たるためにめりはりのある姿を見ることができます。
また逆に満月近くでないと見れない対象もあります。それは、光条(レイ)です。ですから、見る対象に
応じて適切な月齢を選ぶことが大切です。

シーイングとシンチレーション
 天体観測では、空の透明度とシンチレーションによる像の乱れが大きな影響を持っています。これを
シーイングと呼んでいますが、最良(5)、良(4)、中(3)、不良(2)、悪(1)のように表現されます。
一般に望遠鏡の口径が大きいほど、シーイングは悪くなるようです。そのため大望遠鏡設置の場合に
は、シーイングの良い適正な場所を選ぶのに苦労しています。
 地球の上層大気の乱流によって星像が乱れることがありますが、これをシンチレーションと言います。
日本では良いときで2″、平均で3″〜4″くらいです。大気の状態が悪いときには、10″〜20″に達
するときがあります。このようなときには倍率を控え目にして観測するのがコツです。倍率を高くしたとこ
ろで、細かなところが見えるようにはならず、かえってぼやぼやの像になってしまうからです。