ノヴァーリスみす



Georg Philipp Friedrich von Hardenberg
called Novalis( 1772-1801)

金子みすゞ1903-1930)


二人の生きた時代は百年以上も違うし育った風土も違う。この二人の詩人にスポットを当ててみることにした。
ノヴァーリスはドイツロマン派の詩人であり、未完の小説「青い花」の著者としても知られている。神秘主義的な思想とフィヒテの哲学、そしてゲーテやシラーに大きな影響を受けた若き詩人である。12才年下のゾフィーと結婚するが、まもなく彼女は他界する。ノヴァーリス自身も肺結核のために29才の若さでこの世を去っている。詩篇「夜の賛歌」、小説「ザイスの弟子たち」(未完)、断片(1797〜98)などを通して彼の内面を探ることができる。

金子みすゞは明治36年に山口県の仙崎で生まれる。本名を「テル」。500あまりの童謡詩を残している。西條八十に認められるが、夫からうつされた病気を苦に26才の若さで自ら命を絶っている。その前日、写真館できれいに着飾って自分の写真を写している。上の写真がこのとき写したもの。幼子を残して死を選んだのも、止むに止まれぬ選択であったのだろう。来年2003年はみすゞが生まれて100年になろうとしている。奇しくも彼女の生まれた4月11日はぼくの誕生日でもある。

この二人に共通していたもの、それは眼に見えないものへの愛とその眼差しである。

ノヴァーリスは、断片の1節に、 



 すべてのみえるものは、みえないものにさわっている
 きこえるものは、きこえないものにさわっている
 感じられるものは、感じられないものにさわっている
 おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているのだろう。


 光についての論文 2120  新断片集



みすゞは「星とたんぽぽ」で
 青いお空のそこふかく、
 海の小石のそのように
 夜がくるまでしずんでる、
 昼のお星はめにみえぬ。

    見えぬけれどもあるんだよ、
    見えぬものでもあるんだよ。


 ちってすがれたたんぽぽの、
 かわらのすきに、だァまって、
 春のくるまでかくれてる、
 つよいその根はめにみえぬ。

    見えぬけれどもあるんだよ、
    見えぬものでもあるんだよ。
ノヴァーリスの生家  

100年以上の隔たりのある二人の詩人の眼が似ていることに驚くとともに、いまだにこのことばが私たちに与えるインパクトが少しも衰えていないという事実に驚嘆せざるをえないのである。
2002/10/19記