【水陸両用レンズ】

クルマエビ写真2)は、体を丸めたとき甲殻についている縞模様が車のスポークのように見えるところから、この名前がついたといわれています。クルマエビの眼もちょっと変わっています。人間の眼の一番外側にある角膜に当たるところが、レンズになっていて、それも昆虫の複眼のように多くのレンズが並んでいます(図3)。角膜の両側が平面で、さらに屈折率の異なる平凸レンズと平凹レンズが組み合わさった形をしています。 まさに平面色消しレンズアレーなんです。小さなレンズがこのようにいっぱい並んでいるものを「ハエの目レンズ」とも呼んでいます。
 さて、外界と接する面が平面というのは、非常に便利な性能を持っています。というのは外界が空気であろうが水であろうが、遠くの物体の結像位置がほとんど変わらないのです。将来、こんなことを利用した水陸両用の望遠鏡あるいは望遠鏡関連部品が現われるかもしれませんね!



【写真2 クルマエビ】


【図3 クルマエビの眼の模式図】
レンズアレイによる像
レンズアレイによる見え方は上のようになるだろう。ただし視細胞が緻密に分布していて、個室ひとつにレンズひとつがあり、多くの個室を持っているとすればであるが・・。上の写真をみると、それぞれのレンズによって見える範囲が違っているのが解ると思う。これだけの情報を如何にまとめて視覚情報としているかは、この後の処理にかかっている。人間の目にそれも同じ画面に、これだけの情報が一度に入ってきたら混乱してしまうだろう。複眼あるいはハエの目レンズを持っている生物は、これらの情報から捕らえようとする獲物の動きなどを察知して行動している。それぞれの映像は各々分離している個眼の視細胞にのみ影響しているならば、情報が混ざり合うことはない。単眼よりも多くの情報を持っていると言えるだろう。