金星の太陽面通過


日本では130年ぶりで見られた金星の太陽面通過(14:11開始)。梅雨空に少しだけ顔を見せてくれた太陽。雲がひっきりなしに太陽面を通過していく。晴れ間が覗いたのは、はじめの30分くらいで後は曇り。少しでも見られたことで満足すべきだろう。北海道を除いて全国的に天気は悪かったようだ。真丸の金星の姿が影となって太陽に入り込んだとき、太陽の淵がはっきりと切り取られているのが見てとれた。太陽の中央あたりには小さな黒点が二つ見えているが、その黒さに比べて金星の黒さの方が濃いのが分る。黒点が黒いと言っても4000℃くらいの高温で実際は輝いているからだ。周りが明るいために黒く見えるだけ。それに対して金星はまったくの影の領域を見ているので真っ黒に見える。

望遠鏡で見た像のため上下左右が逆
金星の太陽面通過 2004/06/08
Vixen FL80S(D=80mm f=640mm)
PL35mm接眼、ND400
Canon EOS Kiss Digital
1/500sec
埼玉県所沢市にて

神戸のフランス隊の観測風景(石黒敬章氏所蔵写真より)

前回の金星の太陽面通過は明治7年(1874年)12月9日。この現象が観測できる範囲に入っていなかったアメリカ、メキシコ、フランスの各観測隊が日本にやってきている。各チームは長崎(フランス、アメリカ)、横浜(メキシコ)、神戸(フランス)に別れて観測を行なった。このときの目的の一つとしては「太陽-地球間の距離を求める」ことがあった。地球上の離れた地点で金星の通過を観測すると、太陽面での位置が少しずれて見える。これを利用して距離を計ろうというものだった。
この観測によって、1億4800万kmという距離を導き出している。