ライラの冒険



 朝方、コツコツという音がしたので庭に出てみると、コゲラがしきりにキウイの枝を突付いて虫を食べていました。今日は暖かな日差しがあり、日向ぼっこをするのに気持ちがいい。ベランダに腰をおろして、この10日間読み続けている本を読み始めました。シジュウカラのツツピーツツピーという高い声も聴こえてきます。物語も最後の数10ページを残すのみとなっています。以前読んだゲーム理論を思い出しながら、この本を読み進めていました。自分にとって最良のコースを取るとは限らない人間の心理と行動。アシモフの「ファウンデーション」で出てくるハリ・セルダンの心理歴史学というのもゲーム理論と関係しているようです。いかに遠回りに見えようとも過程というものが大事にされます。
 第一作目がすでに映画館で公開されている「黄金の羅針盤」から始まり、「神秘の短剣」、「琥珀の望遠鏡」と続く三部作となるライラの冒険です。日本語の総ページ数で1600ページを超える大作です。作者であるフィリップ・プルマンは年齢で言えばぼくの二つ上。イギリスの作家です。彼はこの作品を7年の歳月をかけて書き上げました。そのため、構成、人物・動物及び自然描写、心理描写、物語性などよく練られています。ハリーポッターシリーズが子供向けファンタジーだとすれば、ライラの冒険は大人向けにも充分通用するファンタジーといえます。冒険の過程で成長していく主人公ライラの姿は宮部みゆきのブレーブ・ストーリーの主人公亘に似ているとも言えます。内容は実際に読んでもらって味わってもらった方がいいので、ここでは述べないことにします。読み出したら止めることができないとだけ申しておきましょう。
 朝方のうららかな天気が夕方には一変し、雨に変わり、しだいに激しくなり雷鳴が轟き、雹が降ってきました。まるで物語の最後を告げるような出来事でしたが、ちょうど本を読み終えたところでした。
 
 記:2008/3/25