落日燃ゆ



今年の3月に亡くなられた城山 三郎さんの力作のひとつに「落日燃ゆ」があります。62回目の終戦記念日を迎えた今でもここに描かれた真実の姿を知ると戦争の恐ろしさを感ぜずにはいられません。
 東京裁判で絞首刑を宣告された東条英機を含む7人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理・外相を勤めた広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、昭和史と重ねながら克明にたどる名著です。東京裁判におけるウェブ裁判長の振る舞いにも改めて疑問を持ちました。
 日本が犯した罪は満州事変に始ります。統帥権を盾に関東軍の独走で始った戦争。これから太平洋戦争の泥沼に突入していく。対外的にいろいろな問題が起こったとき、広田は最後まで外交による解決を志しているが、軍部の抵抗でそれもならず、平和を願っていた天皇(天皇という系譜を認めることはできませんが)をも飲み込んで突っ走ってしまいました。
 長州が残した明治憲法の「統帥権の独立」という一文が軍の台頭を許してしまったことになります。人がより良き憲法を作るのであって、人を締め付けるためにあるのではありません。安部政権は憲法改正を高らかにうたっていますが、多くの人は平和憲法と言われる今の憲法を変えてはならないと思っているものと考えます。参院選での自民党の惨敗の原因のひとつに太平洋戦争における軍部の独走と似て、民衆を無視した政治家の独走にあると思います。年金問題を含めた政治家への不信感・危機感を皆が感じたからこその国民の意思表示だったと思います。この姿勢は持ち続ける必要があります。広田弘毅の一生を見たとき、それを強く考えさせられました。

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城山三郎の主な著作(1927年8月18日ー2007年3月22日)
 『輸出』
 『総会屋錦城』
 『男子の本懐』
 『勇者は語らず』
 『秀吉と武吉 -- 見上げれば海』・・・水上水軍の運命
 『官僚たちの夏』・・・官僚と政府・財界との戦い
 『指揮官たちの特攻 -- 幸福は花びらのごとく』
 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件』
 『落日燃ゆ』・・・広田弘毅の生涯
 『雄気堂々』・・・渋沢栄一の生涯
 『日本人への遺言』
 『嬉しうて、そして・・・』・・・最後の随筆集
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記:2007/8/17