「ローマ人の物語」完結


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第1巻 第15巻

全15冊の大著である。ローマに住んでいる塩野七生さんによるライフワークが第1巻の「ローマは一日にして成らず」から始まり、第15巻の「ローマ世界の終焉」をもって完結した。年1冊のペースで続けられてきた物語は、毎年楽しみにしていた。学者が書く歴史書とは一味違ったいろいろな資料を駆使して独自に読み解く切り口が楽しかった。はじめにこの本を手にしたとき、最終巻まで読み通せるのか心配であったが、年1回というペースのおかげで何とか読むことができた。このシリーズの中で最も印象に残ったのはカエサルにさかれた巻(第4巻と第5巻)である。塩野さんの思い入れが感じられる。はじめにカエサルのことを書こうと思っていたが彼のことを書くためにはローマの全歴史を書くことが必要になったとどこかで聞いた覚えがある。その思い入れがここまで書かせたのだろう。
 ローマという日本からは遠い存在であったものが読み進めるうちに身近になり、日本に置き換えたならどうなるかなど考えながら読むことができた。日本の昭和史に見るような行き当たりばったりのうごきではなくて目標をしっかりと持って行動した人々の生き様には感動する。もちろん、ローマの人々がすべてすばらしいとは言えない。カリグラのようなおかしな皇帝も現れたし、あるときはカルタゴとの戦いにおけるハンニバルのようなすごい敵も現れる。小説を読むような面白さと同時にこれが現実にあったんだという驚きが一緒くたになったローマ人の物語である。今、文庫本化も進んでいるため、まだ読んでいない人も読む機会が多くなることと思う。塩野さん、お疲れ様でした。これから、新規に何か書き始めるのかという楽しみも残っている。まだまだ頑張っていろいろ書いてもらいたい作家である。

以前に書いた紹介文(2001/3/3)
記:2006/12/23