朗読
●人間が声を持って、話すようになってから 久しいが、声の持つ力を失いかけているの ではないかと思えるときがある。 松丸春生(まつまる はるお)さんによる「朗 読 声のおくりもの」は、46億年前の地球 の誕生からひもといて声を持ち、活字を持ち 現代にいたるまでの過程をまず描いている。 そして、活字で失わわれてしまいそうな「間」 の問題など、微妙なニュアンスを読み解く手 も述べておられる。 この本を読むと普段の会話の中でも、話し言 葉の表現法に注意せねばならないことが多々 あることを痛感させられる。 そういえば、ベストセラーになった15歳の少 年と36歳の女性の切ない恋の物語を描いた ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」も、朗読 の力を描いたものと言える。 ドラマを演じる俳優のセリフ、ひとり舞台で朗 読する俳優、詩人あるいはミュージカル、ボー カル、それらもろもろの試みの中に声に対する 思い入れがあるのだろう。 そんなことを、ふと考えさせられた一冊だった。 ●中でも、特に印象に残ったのは次のことばで ある。 話すとは、声で書くこと(描くこと)。 聞くとは、声を読むこと。 読むとは、文字の奥の<声>を聞くこと。 書くとは、心の<声>を文字で話すこと。 |
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「朗読 声のおくりもの」(松丸春生 著)平凡社新書 |