坂口安吾



新聞の書評で紹介されていたのに興味を持ち、坂口安吾を読んでみた。なかなかおもしろい。一筋縄ではいかない人物であることは一文を読んですぐに飲み込めた。
 明治39年生まれ。昭和30までの生涯は世間で無頼派の作家として注目された。太宰治などと同時代に生きた彼は、自分の意見を押し通し、世間に阿る(おもねる)ことなく物を言った作家といえる。終戦直後の1946年に「堕落論」で戦時中の倫理観を否定し、世間の注目を集める。小説「白痴」もなかなかおもしろいが、「桜の森の満開の下」が印象に残る。しかし彼の作品や人物像を述べるのは難しい。ここで述べたところで、本質は伝わらないだろう。彼を知るには当って砕けろしか方法はないように思う。そう言ってしまうと、なぜここで紹介したのかというと、読み終わった後、心に残る何物かがあるからだ。これが何かと問われれば、未だにはっきりしない。それでも紹介せずにはいられない作家である。彼はいろいろな人物と交友を深めている。大岡昇平、中原中也、会津八一、写真家の林忠彦、 政治家の若槻礼次郎、加藤高明などなど。幅広い付き合いの中から彼独特の思想が生まれてきたのだろうと思う。

そういえば、朝日新聞の辛口コラムで定評ある「素粒子」で現法相を「死に神」呼ばわりしたものが載っていたが、言葉は行き過ぎであったかもしれないが、正にその通りだと思える節がある。死刑執行がいかにも多すぎる。坂口安吾が今の世にあれば、同じようなことを言ったかもしれないと思ったりする。
素粒子(2008年6月18日付夕刊)の記事には、永世名人(羽生新名人)、永世官製談合人(品川局長)と共に次のコメントがある。

    永世死刑執行人 鳩山法相。
    「自信と責任」に胸を張り、2ヶ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神。

14日朝、岩手・宮城内陸地震(マグニチュード7.2)が起こった。そんな矢先、この記事に対して本人が記者会見をわざわざ開き目くじらを立てて激怒をあらわにしている姿がテレビに映っていました。何とも度量が小さく大人気ないと思ったりするは僕だけでしょうか。月9のCHANGEを見ながら、今の世の中、本気で庶民の目線で考える政治家が果たしているのか考えさせられます。
 
       
 記:2008/6/24