サンゴと褐虫藻
● 話は古くなるが1992年、ベストセラーとなった本に「ゾウの時間、ネズミの時間」がある。生物学者の本川達雄さんが書かれた本だ。中公新書の普通だったら目立たない存在であったと思うが、理系の本として異例のベストセラーになった。体の大きさと時間の関係をいろいろの例を挙げて説明したもので、こんな見方もあるのかと感激したのを今でも思い出す。 ![]() サンゴは岩みたいに動かないし、いっぱい小さな穴が開いていて、これはいったい何だろうとみんな思うことだろう。海の中の枝を張ったような姿のサンゴからは植物を連想するが、サンゴはれっきとした動物である。クラゲやイソギンチャクの仲間で刺胞動物門に属している。刺胞というのは、小さな毒矢で、これを持つのが刺胞動物である。サンゴはポリプという一個の生物が小さな石灰の穴ひとつひとつに生活している。小さな家をどんどん増やして増殖していく。ポリプは自分の周りをひとつひとつ石灰の砦で囲み、ほかの生物に食べられるのを防いでいる。石灰を作り出しているのはポリプ自身である。ポリプはちょうどクラゲを逆さにしたものと思えばいい。これが石灰の家の底にひとつひとつ張り付いている。この生き物の不思議だと思ったのはポリプの中に、単細胞の褐虫藻という藻類を取り込んで共生生活をしていることだ。褐虫藻は植物なので、光合成で栄養物と酸素を作り出す。栄養のほとんどをポリプに渡しているという。さらに酸素も供給している。ポリプは動物なので当然排泄物がある。それを褐虫藻が受け取り栄養源にしている。相互に利益を共有しているのだ。こういう関係を「相利共生」という。サンゴは安全な住処にじっとしているだけで栄養も酸素もそして排泄物の処理まで行っている理想的な家と言えるだろう。 ![]() ![]() 本の中で本川さんは、「南の時間はゆったりと流れる。機械を使えば便利だが、そんなにどんどんやってしまうと時間ばかりが早くなり、体が追いつかなくなってかえって不幸になる。・・・ 車もコンピューターも携帯電話も、すべて時間を早めるものと言えるだろう。そうして、これらをつくるのにも使うのにも、莫大なエネルギーがいる。もっと時間をゆっくりすればエネルギー消費量が減り、地球温暖化も止められる。非人間的な時間からも解放される。本当は、少々不便で時間がかかった方が、人間らしい時間で生きていけ、しあわせへの道ではないだろうか。」と言っている。沖縄の人たちは持っているものが少々少なくても「なんくるないさー」(なんとかなるさ)と、明日の暮らし向きにおびえをもたないらしい。こんな生き方がこれからは必要になるということだろうか。 |
記:2008/8/22 |