肉眼の性能

 望遠鏡の発達の歴史を見る前に、人間の眼が持っている性能を述べておこう。片方の眼の断面図を見ると、水晶体というものがレンズの形をしているのに気づくだろう。凸レンズの形だ。中学校くらいの理科の教科書にレンズの性質が出ていたのを覚えているだろうか。

凸レンズは光を集めて後ろに像を作るというあの性質だ。眼もまったく同じこと。この水晶体によって網膜というスクリーンに像を作る。人間はこの像を見ていることになる。水晶体の前側にある角膜は、レンズの役目を一部持っているが、レンズ保護の役目も持っている。レンズを両側から支えている毛様体によって、レンズの形を変えてピントを合わせている。虹彩は、カメラの絞りの代りで、外の明るさの変化に応じて、大きさが変わる。眼に入る光量を調節してるのだ。昼間は約2mm、夜になると7〜8mmくらいの直径になる。
 人間の眼では、ピント、絞りなど自動的に調節される
言ってみれば「眼はオートフォーカスカメラ」なのだ。レンズの直径が最高でも7mm程度なので、分解能は角度の1分くらい。角度の1分というのは、100m先のピンポン玉を見込む程度の角度で、もし、ピンポン玉の両端に明るく光る点があるとしたら、眼はこれを2つの点として認めることできる。
 また、眼は、暗い星からまぶしい太陽まで見ることができる。この明るさは、10兆倍も差がある。これだけの違いを、眼は「光を圧縮する」という機能で吸収している。100倍の明るさの違いは2倍の違いに、1万倍の違いはたった4倍の違いに圧縮してしまうのだ。逆に暗い方で言えば、1/100の暗さはたった1/2の暗さにしかならない。
そのため、暗いものに対しては、感度が上がったような効果を持つ。まったく便利な機能が、眼にはあるのだ。