画家・三橋節子



「三井の晩鐘」(昭和48年)

三橋節子という画家をご存知だろうか。梅原 猛の「湖の伝説」(新潮文庫)ではじめて知る。物悲しさの中にやさしさがにじみ出ている絵を書く。鎖骨腫瘍のため絵描きの生命線ともいうべき右腕切断の手術を行なう。それから2年後(昭和50年)に死を迎えるまで、左手で絵を書きつづけた。
死を悟っていた三橋節子は「くさまお」と「なずな」という二人のわが子に絵本を残す。絵本「湖の伝説-雷の落ちない村」は、35歳の若さでこの世を去らねばならない母親からわが子への最後の置き土産である。
自分の病気を夫から聞かされた後、節子は半年足らずで左手で自由に字や絵を書けるようになったという。驚くべきことだ。さらに右手で書いていたとき以上の絵を残している。上の絵はそのひとつ。近江昔話から題材をとった「三井の晩鐘」。苦しい息づかいの中から「ありがとう、幸せやった」と最後のことばを残して・・・。こどもたちには最後の手紙を残している。こんなにもやさしい人がいるのか!


二人の子供「なずな」「くさまお」への最後の手紙