白洲次郎
● エッセイストの白洲正子の名は広く知られているが、白洲次郎のことはまったく知らなかった。白洲次郎は正子の夫である。北康利の「白洲次郎 占領を背負った男」を読んで、はじめて彼の存在とそのすごさを知った。 次郎は1902年に生まれる。彼の父はペリーの黒船来航を25歳のときに見ている。そんな彼を特徴付けているのがケンブリッジ大学を卒業しただけあって、その英語力と世界的視野である。これが彼のその後を決定付けている。吉田茂の影の力となって戦後の日本を駆け抜けることになる。戦争終結後、マッカーサーが日本にやってきた後、抜群の英語力で政府と占領軍との間を取り持つ。それも単なる連絡役ではなく、相手が理不尽なことを要求してくれば、徹底的に戦う勇気を持っていた。はっきりものを言った。そんなことで相手にも一目置かれる存在になっていく。GHQとの確執は、小説を読んでいるような面白さがある。占領政策への対応及びサンフランシスコ講和条約の締結など、彼の存在なくしては違った方向に展開したかもしれない。1985年、83歳で無くなるまで彼の一本気なところは通しぬかれた。学校で教える歴史は、表立ったことしか扱わない。そして表に立った人間がすべてを実行したかのように記述される。しかしその裏で活躍した人々がいたことを忘れてはならない。この本は戦争とその背後にあるものを考えさる一冊である。 一方、白洲正子のエッセイを読むと、彼女の目利きの確かさがよくわかる。「かくれ里」、「西行」、「十一面観音巡礼」、「お能の見方」、「花と器」など日本文化を訪ね歩いて描くその文は美しい。ダンディな次郎と気品のある正子は、まさに出会うべくして出会った二人だと思えてくる。 |
記:2008/9/8 |