スローライフ
●最近流行の言葉であるが、この言葉の響きはなかなかいい。生活にゆとりを持ちたい、趣味を生かした生活、考えに耽る時間、野外での自然との触れ合いなど、スローライフという言葉に含まれている。 子供の頃、よく庭で焚き火をした。いつまで見ていても飽きない。檜(ひのき)はよく燃えたのを覚えている。「火の木」とはよく言ったものである。これが明かりのはじめかもしれない。そしてロウソク。雷が落ちて停電になったときは急いでロウソクを探す。机の上に一本のロウソクが灯る。家族でその明かりを見つめる。静かな時間が流れているのを感じる。時間が止まっている感じだ。 明かりはいよいよ明るい方へと進む。建物のライトアップ、家庭内でも昼間から明かりが点いている、パソコン画面に張り付いての毎日、そんな生活が日常となっている。そんなときにふと、明かりを消して夜空を眺める。月明かり、星明かりというものを感じる。江戸時代には行灯という日本独特の明かりがあった。これは手元を照らすものであって部屋全体を明るくするものではなかった。暗さと明るさの微妙なバランスの中に物の深みが際立ってくる。 ![]() ![]() 今はどうか分からないが、教会の祭壇の向こう側は東に面していたという。そこには明り取りの窓があって、その前で牧師が説教をする。朝日が牧師の後ろから後光のように射す。神々しい雰囲気をかもし出す憎い演出である。 明るさと暗さの並存を感じられる世界がすなわちスローな時間を感じるときだと思う。生活に明るさをではなくて、暗さを求めるとちょっと違った風景が見えてくるようだ。 |
記:2006/9/7 |