菖蒲湯



5月5日の節句の日に、菖蒲の葉を風呂に浮かべた湯につかると、邪気をはらうと昔から言われてきた。家でも毎年菖蒲湯に浸かる事にしているが、今年は日にちが遅れて8日に入ることとなった。菖蒲の葉をもらったのが翌日だった事に依り、一日一日と伸びてしまったのだ。日が違っても菖蒲湯に変わりはないと、勝手に思い込む。「何にも効果があるわけではないでしょ」と言う人があるかもしれないが、これは物理的効果ではなくて、精神的効果が大いにあるということだと思う。「この薬が効くんですよ」と医者から言われると、ただの水でも薬効は無くとも精神的に病気に打ち勝つ事ができることは医学的にも認められている。
菖蒲湯が好きなのは、お湯に浸りながら、ほのかな菖蒲の葉の香りを味わえることにある。これだけで自然と接している気分になれる。これが自然の癒し効果というものだろう。少しの手間暇でリラックスできるのがいい。遠くに出かけて大自然と接するのはそれで楽しいことであるが、もっと身近にも自然があることも忘れてはいけない。菖蒲湯に浸かりながらあることを思い出した。

少し前に横浜のみなとみらいに行ってきたのだが、そこは未来都市のイメージを感じることができる場所である。そんな中で眼を引き付けられたのがクイーンズスクエア横浜の一角の黒御影石に刻まれたことばであった。このモニュメントを作ったジョセフ・コスース(Joseph Kosuth)というアメリカの作家は、コンセプチュアルアート(概念芸術)の第一人者。シラーが、デンマーク王子アウグステンブルク公にあてた書簡第27号から抜粋したことばが刻まれている。このことばがいつまでも心に残っている。題名は「The Boundaries of the Limitless 我らの営みは無限の展開を」
真ん中の人が乗っている3基のエスカレーターと右のモニュメントを比較してみてください。いかに大きいかが分かると思います。大きさ:22mx11.8m。左のスヌーピーもでかいですが・・・。

             
           
樹木は育成することのない
Der Baum treibt unzahlige Kieme,

無数の芽を生み、
die unentwickelt verderben und 

根をはり、枝や葉を拡げて
       screckt weit mehr Wurzeln, Zweige und Blatter


個体と種の保存にはあまりあるほどの
nach Nahrung aus als zu Erhaltung seines Individuums


養分を吸収する。
und seiner Gattung verwendet werden.


樹木は、この溢れんばかりの過剰を
Was er von seiner verschwenderischen Fulle


使うことも、享受することもなく自然に還すが
ungebraucht und ungenossen dem Elementarreich zuruckgiebt


動物はこの溢れる養分を、自由で
das darf das Lebendige in frohlicher


嬉々としたみずからの運動に使用する。
Bewegung verschweigen. So giebt uns die Natur


このように自然は、その初源からの生命の
schon in ihrem materiellen Reich ein

無限の展開にむけての秩序を奏でている。
Vorspiel des Unbegrenzten und hebt


物質としての束縛を少しずつ断ちきり、
hier schon zum Teil die Fesseln auf deren sie sich


やがて自らの姿を自由に変えていくのである。
im Reich der Form ganz und gar entledigt



フリードリヒ・フォン・シラー