● われわれは大気の底から天体を眺めているので、思わぬ光現象に出会うことがある。大気に含まれている水滴や氷の結晶や分子などによって、外からの光や粒子が変化を受ける。
雲間から漏れる放射状の光芒
いつもは邪魔な雲が演出家になる
大気は動いている
天体からの光は揺らされる
星のまたたきは大気からのメッセージ
このときはじめて大気を意識する
( 太陽の光芒 2004/07/20夕刻 ) |
雨上がりの後、太陽を背にしてよく虹がかかる。これは大気中の水滴によって作り出される光現象である。
雨上がり直後には上空に多くの水滴が残っている。そこに太陽からの光がやってくる。一粒の水滴(右下図)を見てみると、水滴に入り込んだ光は内面に達して一部は反射する。そして出てくる光によって虹は作られる。
水滴へ入る高さによって最後に屈折して出てくる角度は違うが、約42度よりも大きくならない。そしてこの最大角に近い光は他の光よりも多いため、明るい光の帯となって見えるが、出てくる角度が色によって違うため七色の帯となって虹が作られる。
( 虹 2002/5/27 18:10頃 撮影:加藤 渉 )
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太陽の近くに小さな太陽が見えることがある。結構明るいものなので、はじめて見ると驚いてしまう。幻日と呼んでいる。
これは高層の雲の中に六角柱の氷の結晶があり、この中を屈折して出てきた光が太陽を中心にして22度の角度の方向に集中するために起こる。右の写真では、この左側に本当の太陽があった。
( 幻日 2002/8/10 17:41 )
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月の周りに大きな環ができている。
大気の中に六角柱の氷(0.05〜0.1mmくらいの大きさ)がたくさん含まれていると月のまわりに大きな環ができる。「ハロー」とか「かさ(暈)」と呼んでいる。月の場合を月暈、太陽の場合を日暈と言う。
これは氷の中で屈折して、月と22度離れた所に大きな円を描く。かさは内側の赤から外側の紫まで虹のようにスペクトルに分かれて見える。さらに大きな円(約46度)を描いて外がさが見えるときもある。色の配列は内がさと外がさでは虹と同じように逆である。
背景に星が見えているが右側の明るい星は「しし座β星デネボラ」である。
( 月のかさ 2002/6/19 富士山巣走口五合目にて、撮影:加藤 渉 )
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2005年6月12日正午頃に「ぐんま天文台」で撮影された環水平アーク(水平環)の写真は少し話題になった。一部の報道では彩雲とされていたが現象的には水平環が正しいようだ。このときの太陽高度は約76度だった。
虹とは違って環水平アークは氷の結晶で左図のように光が屈折して太陽と同じ側(下側)に見える現象だ。
空に氷の板結晶があるときには水平に浮かんでいるのが安定していて、たくさんの氷結晶で屈折した光が重なって見えることになる。この場合、氷結晶が垂直軸の周りにどのように回転していても出てくる方向は同一の直線方向になるが、光の色(波長)によって屈折して出てくる上下の角度が異なるので、水平の虹のように見えることになる。光としては上の面を通って下の面を通り抜けていくものもあるが、これは平行にずれるだけなので色に分かれることはなくて虹にはならない。
( 環水平アーク 、撮影:ぐんま天文台 ) |
流星は地球大気中に微粒子が飛び込んできたときの発光現象である。地球の軌道上には多くのちりや小さな粒子が散らばっている。そこを地球が通過する(流星物質が後ろから追いついて大気中に入り込む流星もある)と、上層大気の分子と衝突してプラズマ化したガスが発光する。普通は高度100〜150kmくらいから光り始め50〜80kmくらいで燃え尽きてしまう。色が微妙に変化しているのは発光する物質の違いに因っている。
( しし座流星群 1998/11/18 4:30-4:39 ) |
記:2006/8/1 |