太鼓の世界



大太鼓(上)、締太鼓(下)

石川県輪島に伝わる御陣乗太鼓や
鼓童の演奏する太鼓の響きはいつま
でも忘れられない。
祭りのときなど、大太鼓の地響きするよ
うな音、締太鼓の連続的な快いリズム。
ぼくが住んでいる鳩山には太鼓の会が
あって、夏祭りやその他のときにその響
きを聞かせてくれる。
鼓韻(こいん)の会」と名づけられたそ
のメンバーは小学生から大人まで基礎を
習いながら、独自のバリエーションを創造
していく。
人、ひとりひとりが独自の宇宙を持ってい
るといえる。

鼓は能楽、長唄などに用いられている
が、先日、鼓のプロである知人に話を聞
いた。
鼓は不思議な楽器で、同じ形、材質で作
っても同じ音は出ないという。昔から伝わ
る鼓の音には、どうしてもならないというの
だ。もちろん鼓は右図のように調緒(しらべ
お)の締め方で音を変えているのであるが。
彼は、鼓でも太鼓でも、皮の内側はひとつ
の宇宙だというのだ。この考えには、ぼくも
共鳴した。今、われわれを取り巻く宇宙は
無数の銀河からできている。まったく同じ
ように太鼓や鼓それぞれに独自の宇宙が
あると考えてもまったくおかしくはない。
鼓が違えば音は違うし、演奏する人が異な
ればまた音が違ってくる。ひとつとして同じ
宇宙は無いのだ。