太陽系は安定か?


ニュートンが引力の法則を見出してから、惑星などの位置は正確に求められていると思い込んでいたところに、「ニュートンの時計(太陽系のなかのカオス)」(日経サイエンス社刊)という本が眼に止まった。読み進むにつれて、確実性がしだいに失われていく。それというのも、ニュートンの法則できちんと解答が出るのは、二つの天体だけがあるときと、3つの天体がある条件を満たしているときだけということから来ている。
太陽系には9つの惑星と、小惑星、彗星などが無数に群がっている。それらをすべて考慮に入れて摂動法という微小変化の積み重ねで長期間にわたって計算することは今のコンピューターが発達している現在でも不可能。計算には必ず省略して問題を簡単にする置きかえが必要。しかしこれが将来に渡っての計算に不確定要素を持ち込むことになる。微小な誤差の累積が100万年、数億年と経過すると、それはもう無視できなくなり信憑性が無くなってくる。これは最初の条件を少し変えただけで、太陽系の未来はいかようにも変わる可能性を持っていることになる。すなわちカオスの可能性を秘めていることだ。
天文学者、数学者たちは、違った視点からこれらのシミュレーションを行なって太陽系の未来を予測しようとしている。 ポアンカレ(1854〜1912)が提案した位相空間を使っての考察などは注目に値する。
確かにわれわれが生きている間に太陽系がどうにかなってしまうということは、どのシミュレーションでも否定しているが・・・。
下図の小惑星の分布図を見ただけで、相互作用を考えながら各小惑星の位置や速度を計算するというのは無謀と思えるだろう。太陽系は運良くというか、それだからこそと言えると思うのだが、ほとんどの質量を太陽が占有しているので、木星、土星、天王星、海王星などを除けば他は微小な天体のためにある程度の計算を可能にしている。いがいに今でも苦労しているのが月の運動だ。地球という惑星にとっては月はあまりにも大き過ぎる。そのため月の不可思議な運動が未だに将来に渡って詳しく計算することができないという。
 科学はすべてのものが分っているいるような顔をしているが、一皮剥けばこんな状態だと言える。これは科学を否定するということではなくて、科学が解き明かした事柄には必ず不確定要素がまぎれこんでいるということを、いつも頭に入れておく必要があるということだ。

約5000個の小惑星のスナップショット
2004/09/08記