タカダワタル的






高田 渡はぼくと同年代であり、ひとつ年下である。去年の春に旅先で亡くなってから早一年が過ぎ去った。大学時代には大学紛争や安保闘争などにからめてフォークが盛んだった。そんな中に渡がいた。当時はあまり好きな歌手ではなかった。なにか突飛な歌で人を驚かせようとするそんな雰囲気があった。岡林信康 の山谷ブルースなんて方が気に入っていた。
渡を見直したのは最近になってからである。若い頃のうわついた声質から渋い声になった晩年の方が同じ歌を歌っても味が出ている。「タカダワタル的」というDVDを見ると、飲兵衛の渡の中に人間味が溢れている姿を垣間見ることができる。主に下北沢のスズナリでのライブの様子と、しょっちゅう通っていた吉祥寺のいせやでの様子などが映像化されている。そのいせやもなくなってしまうというのも渡がいなくなったことと重なってちょっと寂しい気持ちになる。それでも、ワタルの歌はCDでも聴ける。まるで今でもいせやに居座って酒を飲んでは歌っているワタルの姿が蘇ってくるのだ。ワタルの歌で好きなのは「生活の柄」「ブラザー軒」「鎮静剤」「コーヒーブルース」などそして短い歌もなかなか味のあるものが多い。
記:2006/9/30