薪能を見る


篝火(かがりび)を舞台の左右に配して、屋外の舞台で薪能(たきぎのう)が行われた。始まりが18時と、底冷えがする中での鑑賞。持参した座布団型のホッカイロを敷いてではあったが、足の先から冷えてくる。まず、狂言「福の神」から始まる。野村万作扮する福の神は、迫力がある。腹の底から出す笑い声はいつまでも脳に焼き付いている。
高砂などの仕舞に続いて能の始まりである。出し物は「はまなす」。櫻間真理(さくらままこと)扮する「はまなすの精」は、後ろ手に控えた大鼓、小鼓、笛、太鼓、それに座した地謡の面々の声に呼応して祝言の舞を踊る。観阿弥、世阿弥の時代にタイムスリップした感じである。このときばかりは寒さを忘れてみとれてしまった。日本の芸もすてたものではない。はじめての能を見終わった後、体が凍りついてコチンコチンになっていた。寒い・・・。現実に引き戻される。昔の人もこんな寒い中で能を鑑賞したのだろうか? 二月の一番寒い時期に薪能は行われると聞いているが、今度は暖かな能楽堂でゆっくりと見てみたいと思う。
2001/12/24 森林公園「雅の広場」にて