玉の博物館



玉はたま(霊、魂)であり、さらに天体の太陽や月に通じるところがあったため、古代から特別に見られてきた経緯がある。球で思いつくものをあげれば、球技に使う様々なボール、シャボン玉、マリモ、真珠、ビー玉、ベアリング、ボールペン、レンズ、ビーズ、血球、マイクロカプセル、水滴、電球、地球、惑星、太陽、月、球粒隕石、球状星団などきりがない。
そんな球体に惹かれた人々が世界中には大勢いる。森戸裕幸さんもその一人だ。(株)モリテックスの創業者である森戸さんは玉に関するいろいろな物を集め調べて自社内に「玉の博物館」まで作ってしまった方だ。玉の博物館が今年の7月31日に閉館されてしまったのは残念だ。森戸さんの玉に関する著書も多い。「玉の博物館」(モリテックス研究所)、「ビー玉」(文渓堂)、「ビーズ」(文渓堂)、「ペーパーウェイト」(平凡社)を読んでみると、いかに玉に執着しているかがわかる。

        
「ビー玉」は子どもの頃よく遊んだビー玉の種類や伝承遊び、さらにガラス工芸の技術を使った美しい創作ビー玉、メノウや大理石などで作られた世界のビー玉約80種の紹介など、随所に森戸さんの人柄がにじみ出ている。この本で初めて知ったのだが、アメリカやイギリスでは今でもビー玉選手権大会などが開かれているという。こどもから大人まで真剣にビー玉を操っている姿が掲載されている。日本では白黒テレビが現れた昭和30年代をピークに現在では廃れてしまった。ぼくの子どもの頃はメンコとビー玉、缶蹴りが定番の遊びだった。そういえばビー玉で栓をしたラムネもあったな!それに玉と言えばけん玉も盛んだった。森戸さんは1992年に日本マーブル協会を設立してビー玉の遊び方指導や講演会を行なってきた。マーブルとはビー玉のことである。「スフィア」という情報誌を何度か森戸さんから送って頂いたこともあった。sphere即ち球である。

森戸さんは現在、モリテックスの会長を退き、(株)キャビアールと(株)球体研究所を新たに立ち上げている。さらに小説も書き始めたから驚きである。「坊ちゃん物語(起業編)」がこの10月に出版されたばかりだ。ペンネーム森祐介の名でダイアモンド社から出版されている。先日、森戸さんから送られてきた本を読み始めたら止められなくなってしまった。実に面白い! 森戸さんと主人公の坊ちゃんとは性格と人生とが重なっているように思う。物語は夏目漱石の「坊ちゃん」を現代の世界にタイムスリップさせる話だ。

昭和39(1964)年10月、東京オリンピック開催で盛り上がる日本の地に、一人の英国紳士が降り立った。イギリスに遺されていたもうひとつの「坊ちゃん」の原稿を携えて。そこに予期せぬ突風が巻き起こり百余枚の原稿用紙は散り散りになる。描かれていた坊ちゃんを始め、キヨ、山嵐、赤シャツ、野だいこ、マドンナたちのキャラクターたちはやがて昭和、平成の世に次々と甦って…。実直な性格そのままに、現代を駆け抜ける「抱腹絶倒」「奇想天外」のストーリー。

現在、続編を執筆中ということで、早く出ないかと心待ちにしている。
森戸さんとは、ぼくの光学ソフトOPT98((Windows版)の前進であるMS-DOS版の販売でお世話になった経緯がある。ファイバースコープの町田晴彦さんの紹介で付き合い始めたのがきっかけである。森戸さんは非常に気さくな方で、だいぶ前になるが玉の博物館も見せてもらったことがある。現在66歳だそうだが、至ってパワフルである。

森戸さんの紹介記事(PDFファイル 414KB :Nature Interface 2003年8月号の記事)
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記:2006/11/27