竹とんぼ


もう、だいぶ前のことになりますが、天体観測の集まりに
岩内 博さんをお迎えして「竹とんぼ」作りをしたことが
あります。岩内さんは、竹とんぼ作りを小学校の授業の中
に取り入れています。竹とんぼ作りにかける情熱をつぎの
ように語っています。

『 ”もの”自体としては、とにかく驚くほどの飛行能力を
もっているということがあげられます。投げていたような
従来型(旧型)に比べて、新型は、空中で静止してしまう
ほどの飛躍的なちがいがあるだけでなく、人間の手の力
だけでまわりつづけたり、高く、遠く、飛んだりすることへ
の魅力があるのです。

秋岡さんは、回転するものは人間の心をひきつ
ける
地球もまわっている−といっています。


つぎに”作る”過程でのかかわりですが、これは、いうま
でもなく、作り方の伝授、そのやりとりのなかで、人と人
とのぶつかりあいがあるのです。けっして一方通行ではな
く、複合した関係のなかで、”ものづくり”は行われてい
るのです。たんに技術のやりとりだけではなくて、心理面
での葛藤(自信や不安)もふくめて、まさに全人格的行為
だといっていいと思います。竹とんぼ作りには、形のデザ
インといった、その人ならではのもち味が現れてしまうと
ころもあります。
こうしてみると、”たかが竹とんぼ、されど竹とんぼ”の
世界が見えてくると思います。私はこれからも、竹とんぼ
作りのたのしさ、人との出会いのたのしさを味わいながら、
自分の世界(内面的、そして、空間的な)を広げていけた
らと思っています。』

ここに紹介する竹とんぼの作り方は、岩内さん制作の
「竹とんぼ制作標本」
から模写したものです。
こどもといっしょに作ってみたらいかがでしょうか?
最近、ナイフを持つことの規制強化が世間で騒がれてい
ますが、これは本末転倒で許し難いことだと考え
ます。ぼくらの小さい頃は、エンピツをけずるのは自分の
あたりまえの仕事であって、指を切り、痛い思いをしながら
成長してきました。ナイフの禁止は、その身をもって経験す
る場を奪っているとしか思えません。

(註:文中の秋岡さんは工業デザイナーである秋岡芳夫さん
を指しています。

竹とんぼの作り方
Copyright by Yasumi Kato