天の園
●打木村治さんの代表作である「天の園」を病気療養中に読みました。長女が子どもの頃、夢中で読んで感動していた作品であることは知ってはいましたが、はじめてその気持ちがわかるような気がしています。この話の舞台は、私が住んでいる鳩山町の近くの唐子村であるために、長女はそこに登場してくる地名と今の地名を照らし合わせて、あの場所はここに違いないと目星をつけて友達と冒険に出かけて行ったのを今でも覚えています。井戸の上にふたをした大きな石を「こんちは石」と呼んで主人公の保少年がもちぐさをついたり、この上で考え事をしたりしたのはどこにあるのだろうか?都幾川に沿って掛かっている唐子橋、コンニャク橋、ウマ橋、オトウカ橋は・・・。 天の園は6部作になっています。明治末から大正にかけての話で、児童文学の範疇に入れられていますが、大人が読んでも感動する長編になっています。第一部の保が小学1年生から始まり第六部の小学6年生まで、1年ごとの子どもの成長と自然とのかかわり、親類、友人とのかかわりなどが感動的に描かれています。兄弟を村で流行った伝染病で失ったりするが、そんな苦労を乗り越えて保は成長していく。保の家は貧乏ではあるが保が栄養係として川で魚をとってきたり、神社の穴に住み着いた乞食と友達になったりとほのぼのとした物語が展開されています。「景色を見て腹のくちくなる人間」になるということが背景にずっとつらぬかれいます。自然描写とともに少年の心の成長を見つめながらあっという間に読み終わっていました。みなさんにもぜひ読んでいただきたい本です。 *「天の園 第一部〜第六部」(偕成社文庫) |
2004/12/2 |