神妙な顔


 
 何ともいい表情をしている。人間で言えば古老の沈思黙考している姿に似ている。何を考えているのだろう。動物園の見世物になっている自分の運命を悲しんでいるのか、はたまたサルの集団の長ではないがこれからの行く末を考えているのか、あるいは今日の食事は何なのか考えているのか、それを推測することはできない。これこそ猿に聞いてみなければわからない。こんなことを考えるのも人間のエゴなのかもしれない。サルとしてはただのんびりと冬の陽だまりで日光浴を楽しんでいるだけなのかもしれない。確かにこの日は冬にしては暖かい日だった。人間の世界で言えば顔の表情は長年の積み重ねと言われるが、サルにとって、それはどんなことなのだろう。ジャングルでの弱肉強食の世界での毎日の生活、楽しいこともあれば辛いこともあったのだろう。それが一筋一筋のしわに刻まれて今の顔を作っている。眼も同じように無言で過去と現在の運命を語っているように思える。また人間の独りよがりの思考が始ってしまった。
 
 生息数が減少しているゴリラであるが、必ずと言って動物園に飼われていて、人気者のひとつになっている。チンパンジーと違ってどっしりと構えていて落ち着きがある。眼の下のしわが今までの苦労を物語っている。アフリカ中部の森林地帯に生息するゴリラ、そしてこのゴリラはあるいはこどもの時に親と引き離されて動物園に連れてこられたのかもしれない。ジャングルの生存競争を知らないで生きてきたのかも知れないと思ったりする。
 記:2008/2/11