宇宙を旅する


星空を眺めていると、宇宙空間に放り出されたような錯覚に陥ることがよくある。それも降るような星空の元で・・・。地球と言う乗り物に乗って宇宙を旅しているという発想は「宇宙船地球号」というだいぶ前に流行ったことばにすでに現れている。本の世界でも同じような体験をする。星の世界に吸い込まれ、いつしか夢のような世界に遊んでいる自分を発見し、ハッとする。まさにネバーエンディングストーリーと同じなのかもしれない。最近読んだ本にこれと近いことを体験した。「創造する宇宙」。アメリカのクリフォード・A・ピックオーバーによる宇宙の旅である。SFと実際の天文講義をうまく組み合わせた構成になっていて天文学の基礎を学べる仕掛けになっている。

目次を見ると、いかにも天文学の教科書っぽいところがある。

第1章 視差と超越性探求
第2章 喜びと星の光のパッシェン
第3章 スペクトル分類と温度とドップラー・シフト
第4章 光度と距離指数
第5章 ヘルツシュプルング・ラッセル図、質量と光度の関係、連星
第6章 太陽圏界面の最後のタンゴ
第7章 恒星進化とヘリウムフラッシュ
第8章 星の墓場、核合成、そしてわたしたちが存在する理由
第9章 おわりに

しかし中身はそうでもない。SFにからませて物語を構成しているために、
話の先を読みたくなってくる。400ページを超える本であるが、一気に読
み通してしまった。また著者の哲学的思考も入っていて考えさせるところ
もある。この本を読むと、人も星のかけらから生まれてきたことを確信する
ことだろう。それだからこそ、宇宙の中に放り出されてさまよう自分を発見
すると同時に、広い宇宙との一体感を体験することにもなるのだ。
「創造する宇宙」主婦の友社
本体2500円