●ほうき星、彗星、コメット(comet)いろいろな名前で呼ばれる。空の彼方から現れて太陽に接近した後、再び遥か彼方に去っていく。まさに空をさまよっている天体のように見える。中世のヨーロッパでは長い尾を引いた彗星が空にかかると、戦争や飢饉・疫病などの悪い作用を及ぼすと思われていた。当時、彗星は地球大気内の現象と考えられていた。昔、日本や中国でも妖星と呼んで不吉な前兆と見なしていた。
近年においても1910年にハレー彗星が地球に接近してその尾が地球をかすめるという話から悪意あるデマが飛んだ。尾には有毒な物質が含まれていて、それを吸い込むと死を招くと。そんなデマゴーグにのせられて自殺者まで現れたという。今ではこんな話を信じる人はいないと思うが、彗星の姿に悪魔的なものを感じるのか、それとも美しいと感じるのかは人それぞれである。僕はあの美しさに地上のものとは違う崇高さを感じる。そこで今まで出会った魅力に満ちた彗星たちを紹介することにしよう。特に形の違いと色に注目して欲しい。
1986年、ハレー彗星(0001P)
76年周期のこの彗星に関しては知らない人はいないだろう。1986年に最接近したときの姿は扇方に広がっっていた。彗星の形は太陽、地球、彗星の位置関係と接近具合によって違ってくる。彗星は遠いときにはぼんやりとした丸い雲状に見えるが太陽に近づくにつれて尾を伸ばしていく。よく言われるように彗星は「汚れた雪だるま」だ。雪の中に小さな砂が混じっていると思えばいい。太陽に近づくにつれて蒸発・昇華が進みガスが核のまわりを囲むようになる。このガス体をコマという。さらに太陽に近づくと尾を引いてくる。(1986/4/11)
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1992年、スイフト・タットル彗星(0109P/1992S2)
この彗星は夏の流星「ペルセウス座流星群」の母彗星として知られている。回帰のたびに置き土産を残していく。とは言っても回帰は128年から135年(以前は120年と言われていた)と長いので一生に一度見れれば幸運と言えるだろう。流星の元になるダストを置き土産として残していくのだ。この塵の中を地球が通り過ぎると流星が多く流れる。スイフト・タットル彗星は典型的な彗星の形をしている。核の周りに青みがかったコマが取り囲んでいて尾が長く伸びている。
(1992/11/27) |
1994年、シューメーカー・レビー彗星が木星に衝突
核の分裂したシューメーカー・レビー彗星が次々に木星に衝突するという前代未聞の天文現象が見られた。彗星は通称SL9と呼ばれ、世間でも騒がれた彗星のひとつだ。木星表面に黒い衝突痕を残した。ガス体でできている木星では痕は残らないと予測されていたが、かなり長い間痕は残っていた。(1994/7/22)
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1996年、百武彗星(C/1996 B2)
近くの堂平山に観測に行った。北天に長く伸びた細い尾が印象的だった。翌年期待されていたヘール・ボップ彗星の前哨戦と言える彗星だった。(1996/3/26)
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1997年、ヘール・ボップ彗星(C/1995 O1)
今まで見た中では最も明るかった彗星だ。二年も前に発見された彗星は軌道計算から大彗星になると早くから予想されていた。そして予想に違わない雄姿を見せてくれた。青いイオンの尾とやや黄色っぽいダストの尾が分かれて見えている。他の彗星と比べてダストが多く含まれていたようで、太い尾が肉眼でもはっきりと見ることができた。
(1997/3/30) |
2002年、イケヤ・チャン彗星(C/2002 C1)
池谷薫さんと、中国の張大慶(チャン・ターチン)さんによって発見された彗星。青いイオンの尾をまっすぐ伸ばした彗星らしい姿をしていた。(2002/4/13) |
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2004年、ニート彗星(C/2001Q4) 。
ニート(NEAT)はNear Earth Asteroid Tracking の略。NASAのジェット推進研究所が行なっている地球に近づく小惑星の捜索プロジェクト。ハワイマウイ島にある1.2m反射とパロマー山にある1.2mシュミットカメラによって捜索を行なっている。この彗星は2001年8月24日に19等で発見されたもの。左上に長く伸びたイオンテイルと直角下方に短いダストテイルが出ている。
このとき同時にリニア彗星(C/2002 T7) も見られた。リニア(LINEAR)はLincoln Near-Earth Asteroid Research の略。マサチューセッツ州工科大学リンカーン研究所が行なっている特異小惑星を探すプロジェクトで、口径1mの反射望遠鏡2台を使用して地球に接近する小惑星捜索を行なっている。その捜索に彗星が良く引っかかるため、リニアと名がついたものが多い。この彗星は2002年10月14日に17等で発見されたもの。(2004/5/25) |
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2005年、マックホルツ彗星(C2004 Q2)
アメリカ・カリフォルニア州に住むアマチュア天文家・マックホルツさんが、2004年8月27日に、口径15cmの望遠鏡でエリダヌス座で発見した彗星。発見されたときの明るさは11等級。最接近時には3等台の明るさまでなった。すばるのそばを通過したマックホルツ彗星(2005/1/7)
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2006年、ポイマンスキー彗星(C/2006A1)
ポイマンスキー彗星は全天自動サーベイASASで撮影された画像から、ワルシャワ大学天文台のポイマンスキーさんが発見した彗星。(2006/3/8) |
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2006年、シュワスマン・ワハマン彗星(73P)
分裂した多数の彗星が一度に見られためずらしい彗星だった。特にB核とC核が明るかった。(2006/5/3)
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記:2006/7/13 |